日本人にとってのフォルクフーグスコーラ留学の魅力|「学び直し」留学の実体験レポート

スウェーデンの苔むした芝生に落ちるハイイロガラスの羽根 体験談・コラム

フォルクフーグスコーラが与える「余白」や「自己探求」

スウェーデンの成人教育機関『フォルクフーグスコーラ(FHS)』は、発祥国デンマークの「フォルケホイスコーレ」という言葉で世界的に広く知られています。

”入学試験や成績のないフォルクフーグスコーラは、国籍を問わない18歳以上のすべての人々が無償で通い、学ぶことのできる北欧独自の学校です。”
そう聞くと、海外留学に憧れている全ての人や『学び直し』を検討している社会人の方々にとって、とても魅力的で夢のようなところだと感じるのではないでしょうか。

日本の高等教育の水準は、世界的にも高く評価されていますが、画一的かつ均質的なカリキュラムを受けることに慣れた私たちに、新しい学びの風を運んできてくれるのが『フォルクフーグスコーラ留学』だと思っています。

本記事では、海外留学に惹かれ悩んでいる人々や、社会人になってから再び何か新しい体験や学習を求めている人たちに向けて、スウェーデンが提供する「ちょうどいい学び」を筆者の留学体験を交えてご紹介します。

この記事で分かること

✓ FHS留学のリアルな学校生活スケジュール

✓ スウェーデン独自の「Lagom / ちょうどいい」という価値観

✓ FHS留学への素朴な疑問と回答(Q&A)

(所要時間: 約15分)

「学び直し」で人生を見つめ直す

社会人として仕事を続けながら、時には残業もある中で、新しいことを学ぼうとしたり学び直しをしたい時、そういった夢や目標を実現することは中々簡単なことではありません。

休日は文字通り「休む日」として体力の回復だけで終わったり、仕事と学びのバランスの調整が難しかったりするものです。

そんな日々の中、少しでも「環境を変えたい」「ゆっくり伸び伸びと新しいことに取り組みたい」と考えているなら、長期休暇という名の「学び直し」に挑戦するのはいかがでしょうか。

スウェーデンのフォルクフーグスコーラでの留学生活は、”時間に追われ、物理的・精神的に余裕のなくなりやすい日々”から離れ、少し立ち止まって自分の人生を見つめ直し、新たな余白や自己探求の機会を与えてくれる”ちょうどいい”居場所になるでしょう。

筆者がFHSを選んだ理由

筆者がフォルクフーグスコーラ留学を選んだのは、まさに「新しい環境・学び」を求めていたからでした。

仕事のキャリアを重ねるまま30代後半になり、一度立ち止まってみたい思いもありました。そこで勇気を出して1~2年くらい休暇を取って留学しようと決め、私の”わがままな学校探し”は始まりました。

  • 新しいことを学びたい、でも睡眠を削るような大変な学生生活は望んでいない
  • 潤沢に学費を出す余裕はない・・・少しでもコストのかからないところにしよう
  • せっかく新しいことを学ぶのだから、座学ばかりではなくて”体験”できるものを

日本だけでなく 世界中の大学・専門学校などもリサーチしてみた結果、すべての条件がピタリとはまったのがスウェーデンのフォルクフーグスコーラでした。

“Lagom”という魔法の言葉

スウェーデンの価値観の一つに“Lagom (ラーゴム)”、「ちょうどいい」という言葉があります。
“lagom”は、英語だと”Not too much, not too little.”という言葉が当てられるようで、「多すぎず少なすぎず、適当(適量)」であるという意味を指します。

筆者はスウェーデン語を学んだり、スウェーデン関連の情報を探す中で知った単語でしたが、実際の留学生活でその感覚を知ることになりました。

ある初秋の昼下がり、その日は適度に陽が出て、暑くも寒くもなく、風も吹いていませんでした。
食堂でランチを食べて校舎へ戻る私に、隣を歩くクラスメイトが教えてくれました。

「知ってる?スウェーデンには”Lagom (ラーゴム)”、「ちょうどいい」って言葉があるんだけど、今日みたいな天気は”ラーゴム”だと感じるよ。」

この日を境に、よく耳にする*ことになった”Lagom”は、アクセルを踏み続けやすい私にとって「ちょうどいい」ブレーキになってくれました。

*言葉を感覚的に理解し、意識できたことで単語が聞き取れるようになったのだと思います

フォルクフーグスコーラでの留学生活

フォルクフーグスコーラでの学校生活は、朝9時から昼2時すぎの5時間ちょっと、金曜は正午で授業が終わります

それに加えて週末二日間の休息、さらにセメスター中に1~2回は一週間前後の休暇がある日々。毎日学ぶことや感じることはたくさんあるのに、生活コストも時間の余白も、日本では考えられないくらいゆとりのある暮らしがそこにはありました。

フォルクフーグスコーラ留学にはちょうどいい「時間」と「心」の余白があり、生活に慣れるうちに とことん学びたいことや興味のあることを追求したい気持ちが自然と湧いてくる環境でした。

これからの自分や人生を見つめ直したり、ゆったりだらけて過ごしたり、旅行に出かけたり。余白を使ってのびのびと羽を伸ばす。何をするも何をしないも、すべてノーストレス自分次第の毎日でした。

筆者の通ったフォルクフーグスコーラの1週間
時間\曜日 (月)~(木) (金) (土)~(日祝)
㈪ *9:00~9:30
    8:30~9:00
フィーカ
(朝食やコーヒータイム)
フィーカ
(朝食やコーヒータイム)
休日
㈪9:30~12:00
   9:00~12:00
午前のクラス*
(日替わり2コマ)
*途中フィーカあり
午前のクラス
(日替わり2コマ)
*途中フィーカあり
 
12:00~13:00 ランチ ランチ 寮で自炊
㈪ 13:00~14:45
   13:00~14:15
午後のクラス
(独習*)
フリータイム  
14:15/14:45~17:00 フリータイム* フリータイム  
17:00~18:00 ディナー 寮で自炊 寮で自炊
18:00~24:00 フリータイム フリータイム  

*㈪だけ30分遅い:スタートが遅めで連休明けの体に優しい時間割
*午前のクラス:日替わりの座学や講師による授業。
*独習:各自のプロジェクトを進める。講師が定期的に見回りに来る。
*フリータイム(+休日):コース校舎内での作業が許可されていて自由に出入りできる

月曜の朝は30分遅いスタート

月曜のスタートが遅めで、連休明けの体に優しい時間割。ここに”スウェーデンの良さ”が詰まっている気がしました。

学校の授業はどれも楽しいもので、好きな授業は心待ちしたほどでしたが、週末を満喫した日曜の夜は「明日からまた学校か…」とつい思ってしまうこともありました。

朝が30分早いだけで気持ちがずいぶんと軽くなりました。日本の学校や会社にも導入されればいいのに、と切実に思います。

午前のクラス

午前中は日替わりの座学や講師による授業で、大体1~2つのカリキュラムが設定されていて、1限目20分、2限目40分(終わり次第ランチまで独習)または85分という構成でした。

1コマの時間はあくまで目安で、座学や課題が早く終われば、午後のクラス(独習)を各自前倒ししてもよいという、緩くて柔軟な進行です。

同じ内容を学びながらも、個人の習得ペースごとに自由に柔軟に進んでいく――ここにスウェーデンの個人主義を感じたりもしました。

2回目のフィーカ(午前中)

2限目の途中で大体フィーカ(コーヒータイム)が1回入っていました。ただのコーヒーブレイクの時もあれば、誕生日を祝う会になる時、持ち寄りの手作りクッキーやケーキを食べることもありました。

休憩時間も明確に決まっておらず、「集中が切れたな」というタイミングで誰かが声をかけて、10~30分ほどコーヒーや紅茶を飲みながらお菓子をつまんで談笑するという時間になっていました。

このフィーカタイムを利用して、授業の不満や改善点を話し合ったり、校外学習のプランの希望を相談し合ったりも行われていました。

独習(午後のクラス)

日替わりの授業とは別に、〆切のある課題(プロジェクト)が出されていて、午後のクラスは主にその作業にあたっていました。

講師が見回りしていく中で個人の制作をフォローアップしていくという方法で、完全に自分のペースで段取りを組んで進めていけました

フリータイム(+休日)

すべての授業が終わった後も、校舎への出入りは自由に許可されていて、目安として17時までは”居残り作業”という枠組みがでしたが強制ではありませんでした。

学校は校舎ごとにセキュリティキーや講師や学校スタッフが管理する電子キーで管理されていて、校舎に関連する人だけが施錠キーを知っていました。

放課後や休日の学校スタッフや講師が不在の時も、生徒は自分のコース校舎へ自由に出入りできました。

授業の出欠について

毎朝、欠席の時だけ学校のシステムに欠席報告をする仕組みになっていました。ただ、これは学校に通知が行くだけだったので、システム内のグループチャット内などで前日や当日に欠席や遅刻の連絡を入れていました。

早退に関しては、家庭の事情や不調だけに関わらず、個人的な予定も含めて講師へ報告すればいつでも自由に帰ることできます。

「無断欠勤や授業への不参加などが続く場合、学校側で然るべき対応を取る」と入学時に通達されていたのと、ほとんどの生徒は自分の意志で選択して学んでいる雰囲気が感じられました。

【実体験】やる気のない生徒はどうなるか

筆者の暮らした寮は2棟あり、入学当初は各20名前後の生徒が所属コースに関係なく生活を共にしていて、寮生の半数以上は一般コースの生徒で大体18歳前後の生徒が多く、私を含めた専門コース生は10名ほどで年齢は10~30代とバラバラでした。

やる気のない生徒は、入学後1~2か月で寮からいつの間にかいなくなっていて、前期が終わる頃に私の寮の人数は17名から6名までに減りました。

自分の選択が合わないと感じたら、ズルズルとやる気ないまま学ぶのではなく、潔く辞める決断をする人が多いなと感じました。

2つの”心を緩めてくれる言葉”

約1年間の学校生活では、誰もがありのままで、分け隔てなく、無理をせずにストレスや焦りのない「ちょうどいい」ペースと「ちょうどいい」密度がありました。
そんなスウェーデンらしい価値観が根付く魅力な学びの場で、ことあるごとに生徒が耳にする言葉が2つありました。

  • “Ingen stress. (ノーストレス / No stress.)”
  • “Du bestämmer. (あなたが決めるんだよ / You decide.)”

渡航したての当初は分からないことが多くて不安もあり、日本特有の時間や物事に対する「こうあるべき」という感覚に囚われていたように思います。
そういう時、必ず講師は私に“Ingen stress (ノーストレス)”, “Du bestämmer. (あなたが決めるんだよ)” と声をかけてくれました。

新しい環境(学校)で新しいことを学ぶ過程で、スケジュールや締め切りはもちろん設けられていましたし、自分の意見や考えを述べる機会、周囲からアドバイスをもらえる機会は数多くありましたが、その中では時間に追われたりジャッジされることへの焦りや不安、強制は一切ありませんでした。

これは日本では決して味わえない、不思議で安心できる感覚だと今でも思っています。

”Ingen stress, du bestämmer.”

フォルクフーグスコーラの生活やスウェーデンの暮らしのほんの一部を「ちょうどいい余白」という視点でご紹介してみましたが、どう感じたでしょうか。

スウェーデンのFHS留学は、「明確にこれが学びたいんだ」という意志を持って検討している方はもちろんのこと、働き詰めの社会の喧騒を一旦忘れてゆっくりしたいと思っている方、好きなことや興味のある分野を学びながら海外生活を送ってみたいという方にもおすすめできる新たな挑戦だと思います。

個人的には、ノートパソコンさえあれば、リモートで働きながらスウェーデンで暮らせるんじゃないか……と夢見てしまうくらい優雅でぜいたくな留学生活でした。

キーワードは”Ingen stress, du bestämmmer.”。

あなたの実現したい「学び直し」に、ぜひフォルクフーグスコーラ留学を加えて検討してみませんか?

FHS留学のQ&A

Q1: 日本人でもなじめますか?

A: 馴染めます。

スウェーデンの人々は、日本人の気質と似ていて控えめですが、とてもフランクでフレンドリーです。最初は緊張するかもしれませんが、きっと学校では留学生というよりは”一人の生徒”として認識されるだけなのですぐになれると思います。

筆者の場合は、クラスメイトや寮生、学校スタッフから、最初に「(授業外で)スウェーデン語と英語、どっちで話してほしい?」と聞いてくれる人が多く、国外(移民)の人への対応に慣れているなと感じました。

堪能なクラスメイトや10~20代の生徒との会話は英語にしていましたが、半年も経つとスウェーデン語の方が口から出てくるようになりました。

Q1: 留学費用が安いのは本当ですか?

A: 本当です。

学費は無料で、サービス料という学校運営費が学期または年間で2万円前後かかるだけです。(学校によって変動します)

寮費も学校次第ですが、平日のみ食事付きでひと月約8~12万円ほど。週末の食費や娯楽費を入れても、留学費用は10ヶ月で総額160万円程でした。これは通常のヨーロッパへの語学留学の1/3~半分以下です。

Q1: 独りでも大丈夫ですか?

A: 大丈夫です。

筆者は単独で留学の手配をして渡航しましたが、学校のクラスメイトはみな親切でフレンドリーでしたし、日本に縁のある友人を紹介してくれました。

ホームシックになりやすい性格なら、寮生と交流を心がければ孤独を感じることは少なくなるでしょう。そのためにも語学学習は必要だと感じます。

独りで出かけたり旅行するのも、基本的に明るい時間帯にし、危険なエリアへ近づかなければ安全に過ごせると思います。

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