デンマークとスウェーデンの国民高等学校(FHS)を比較する
本サイトはスウェーデンのフォルクフーグスコーラ(FHS)について扱っていますが、この学習機関は元々、お隣の国デンマークで生まれました。
北欧諸国に広がる成人学習機関、”フォルケホイスコーレ”。国によって呼び名や特徴が変われど、その本質やシステムの骨格はおおむね変わりません。
本記事では、発祥国デンマークの同機関『フォルケホイスコーレ』について、スウェーデンのフォルクフーグスコーラとの違いが分かるよう簡潔にまとめてみました。
この記事で分かること
✓ デンマークのフォルケホイスコーレの概要
✓ スウェーデンのフォルクフーグスコーラとの違い
✓ 2国の物価事情
(所要時間: 約10分)
デンマークのフォルケホイスコーレとは?
発祥国デンマークのフォルケホイスコーレ(以下FHS)は、スウェーデンのFHSとほとんど変わりません。あくまで筆者が調べたところ、デンマークのフォルケホイスコーレの主な特徴は次の4点です。
- 全寮制(授業費込みの有料)
- 専攻を複数選べる
- 大学進学コースがない(学べるが進学資格は取れない)
- 英語で学ぶことができる(一部の学校のみ)
1. 全寮制(授業料込みの有料)
まずスウェーデンのFHSと大きく違うのは、すべての学校が全寮制であることです。学費は寮費(食費含む)や授業料、資材費等を含めたコストを支払う仕組みになっています。
公式ウェブサイトによると、週1 700DKK(約40,000円)の費用に加えて別途交通費とお小遣いが必要になりますが、学校によってこのコストは1 200~2 500DKK間で変動するようです。(2025年8月時点)
*最新の情報は公式サイトを確認してください。
1か月の生活コスト(デンマーク)
- 授業料(寮や食費等すべて含む):
4 800~10 000DKK(約114,000~237,000円)
*週1 200~2 500DKKを4週に換算した場合
*上記に加え、交通費・娯楽費などは別途必要
▶ スウェーデンのFHSの生活コスト
一方でスウェーデンのFHSはすべての学校に寮があるわけではく、また、寮住まい・通学どちらも選ぶことができます。
授業料は無償ですが、サービス料という学校運営費が年間または学期で2万円前後かかり、コースによっては材料費が別途必要になります。
寮で暮らす場合、上記に加え寮費も別途支払うので、スウェーデンのFHSはデンマークのFHSと大差ない仕組みかもしれませんが、スウェーデンの方が物価は低いです。
筆者の肌感ですが、デンマークはスウェーデンの1.5倍ほど物価が高いです。
1か月の生活コスト(スウェーデン)
- サービス料・寮費(平日の食費込)の合計:
約5 000~9 000SEK(約83,000~148,000円)
*上記に加え、娯楽費などは別途必要
*2025年9月時点
2. 専攻を複数選べる
フォルケホイスコーレには8つの専攻ジャンルの中に200以上の科目があります。
すべての科目から複数を組み合わせて自分だけのスケジュールを作ることができるので、学べる内容の幅をより広げることができます。
▶ スウェーデンのFHSのコース選び
スウェーデンのフォルクフーグスコーラでは、専攻コースは一つしか選べません。
約2,000あるコースの中から1つを選ぶと、受講期間の間はその分野だけを深く学ぶスタイルになっています。
3. 大学進学コースがない
フォルケホイスコーレは国にサポートを受けて運営されているものの、正式な教育機関の一部という位置づけにありません。
そのため一般コース(高等教育)の学び直しは可能ですが、受講後に大学や短期大学へ入学する資格を取ることはできません。一方で専門コースは豊富で、就職を見据えたディプロマ(証明書)を取得することができます。
▶ スウェーデンのFHSの一般コース
スウェーデンのFHSで提供されている一般コースは、高等学校、大学、短期大学への進学資格を得ることができます。
また、デンマーク同様に就労支援や移民向けのコース、専門職コースがそろっています。
英語で学ぶことができる(一部の学校のみ)
デンマークのフォルケホイスコーレは約70校あり、基本的に授業は母国語であるデンマーク語で行なわれます。
しかし、その内の8校、計30コースが英語で教育を受けられるようです。(2025年9月時点)
▶ スウェーデンのFHSの授業
スウェーデンも、デンマーク同様にスウェーデン語での授業が基本となります。
スウェーデンのフォルクフーグスコーラは約150校ありますが、その内13校、計18コースが英語で受けられます。(2025年9月時点)
| 項目 | デンマーク(Folk højskole) | スウェーデン(Folkhögskola) |
|---|---|---|
| 寮の有無 | 全寮制 | 学校による |
| 授業料 | 有料 | 無料 (寮費、サービス料別途有) |
| 毎月のコスト | 授業料/寮費/食費等: 4 800~10 000DKK (約114,000~237,000円) |
寮費(平日食費込): 5 000~9 000SEK (約83,000~148,000円) |
| 大学進学資格 の取得 |
不可 | 可 |
| 英語で学べる | 一部あり 8校、計30コース |
一部あり 13校、計18コース |
*2025年8月時点の情報です
*出典:
hojskolerne.dk -スウェーデンのフォルクフーグスコーラ公式サイト
folkhogskola.nu -スウェーデンのフォルクフーグスコーラ公式サイト
フォルケホイスコーレの公式サイトはこちら
デンマークのフォルケホイスコーレに興味を持った方や詳細な情報をもっと知りたい方は、ぜひ公式ウェブサイトを覗いてみてください。デンマーク語、英語それぞれの言語用の公式サイトがあります。
(以下リンク:英語ページが別窓で開きます)
英語やデンマーク語で読むのが不安…という方は、PCブラウザの翻訳機能や翻訳アプリを使ってみてください。任意の言語にページを丸ごと翻訳してくれます。
スマホやタブレットからの閲覧は、Google Chromeや翻訳アプリが便利です。
物価の高い国、デンマーク
デンマークはヨーロッパや北欧の中でも比較的物価の高い国に位置付けられます。
筆者は、留学中の2025年春にデンマークの首都コペンハーゲンを旅行しましたが、ホテルや外食の価格は日本の2~3倍の高さに感じました。食べ物に関しては、フードコートなどの軽食の単品が2,000円前後、スーパーの食材はスウェーデンの1.2-1.5倍ほど(日本の1.5~2倍)と割高でした。
交通機関は電車のみの利用でしたが、ゾーンごとの時間制チケットが1回分約550円程で、こちらはあまり高いと感じませんでした。(通学定期券があるので、実際の通学で利用するなら割安になりそうです)
首都近辺の観光目的での滞在だけでも物価の高さは感じましたが、コストダウンを図る為にスウェーデン南部に住んでデンマークへ出勤している人々も実際に多くいるので、食品以外の日常の生活コストも、やはり割高なのだろうなと予想できました。
ちなみにコペンハーゲンは、スウェーデン南部の都市マルメーから電車で橋を越えて40分程度の距離にあります。
学校の立地で生活コストは変動する
デンマークのFHSは、都市部に近い学校もあれば島や沿岸部に建てられている学校もあり、交通手段や生活スタイルが学校の立地によって変わります。そして学校によって授業料が大きく変わる点も注意が必要です。
物価の高い国といえど、全寮制なので部屋を借りて生活するよりは出費が抑えられますが、北欧諸国と比較すると留学費用は割高になるでしょう。
国に関わらず留学自体を検討している方は、学校の情報だけでなくこうした生活圏にまつわるの情報もあらかじめよくリサーチし比較検討することをお勧めします。
デンマークとスウェーデン、あなたに合うのはどっち?
デンマークがおすすめな人
- 専攻を一つに絞りたくない人
- 短期留学を希望する人
- 費用に余裕がある人
- ヨーロッパ旅行がしたい人
:複数の科目を選んでカリキュラムを作ることができる(全70校、約1500コース)
:1~7週間のコースがメイン(約1,300コース)
:月のコストは11~23万円程度+α
:ヨーロッパ大陸の北端に位置するので周辺国へ旅行しやすい
スウェーデンがおすすめな人
- 専攻を一つに絞りたい人
- 長期留学を希望する人
- 低コストで留学したい人
- 北欧旅行がしたい人
:1つの分野だけを掘り下げて学ぶことができる
:生活コストを抑えられる、長期コースが豊富(約800コース)
:月のコストは8~10万円程度+α
:ノルウェー、フィンランド、デンマークと近くて移動しやすい
筆者の結論
個人的には、低コスト+長期留学ならスウェーデン、英語で短期留学ならデンマークの組み合わせがいいかなと思います。
私自身はスウェーデンを選び、10ヶ月で総額150万円程度で留学できました。デンマークなら同じ期間で最低でも200万円以上かかる計算になります。
ただし、デンマークは英語で学べるコースが多いため、物価が高くても英語での授業を希望したい方はデンマークが合っているかもしれません。
第一部を終えて・・・
第一部では『フォルクフーグスコーラ(FHS)』について、学校の歴史や特徴からスウェーデンという国について、またデンマークの同機関との比較など、FHS留学の魅力やポイントを詳しく解説しました。
ご自身の実現したい留学観とフォルクフーグスコーラ留学のリアルとの照らし合わせができたでしょうか? 少しでもFHS留学への理解が深まり、意欲を高める一助になっていれば幸いです。
次の第二部からは、フォルクフーグスコーラ留学を決めたあなたにとって”実践的ですぐに使える渡航準備の流れやポイント”を順序だてて丁寧にくわしく解説していきます。
引き続き、ガイドブックとしてお供にしていただけると嬉しいです。
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